福岡高等裁判所宮崎支部 平成6年(行コ)4号 判決
事実及び理由
三 本案前の争点に対する判断
1 保安林の指定の解除処分の取消訴訟における原告適格及び保安林における形質変更行為の許可処分の取消訴訟における原告適格についての基本的な考え方は、原判決事実及び理由「第五 争点に対する判断」の「一 原告適格について」の「1 保安林の解除処分の取消訴訟の原告適格について」及び「2 保安林における形質変更行為許可処分の取消訴訟の原告適格について」に説示するところと同じであるから、これを引用する。
2 ところで、〔証拠略〕によれば、本件許可処分後、(1)本件許可処分の対象である解除予定保安林のうち、宮崎県告示第四九一号による解除予定保安林(面積四九・一四八五ヘクタール)については、作業許可期間内の平成五年二月二二日に許可内容の本件形質変更行為及び代替施設計画書に基づく代替施設設置等の作業が完了したので、農林水産大臣は、同年四月二二日付農林水産省告示第四一三号をもって、法二六条二項の規定により保安林の指定を解除し、同日をもって宮崎県知事にその旨を通知し、(2)また、本件許再処分の対象である解除予定保安林のうち、宮崎県告示第四九二号による解除予定保安林(面積一二・〇〇六四ヘクタール)については、右作業期間内に所定の作業が完了しないので、フェニックスリゾートの申請に基づき、被控訴人は、平成六年四月二八日付をもって、同会社に対し、作業期間を平成六年五月一日から同年一〇月三一日までとして、公園用地としてホテル等を建設することを目的とする形質変更許可処分をし、同年七月三一日には許可内容の本件形質変更行為及び代替施設計画書に基づく代替施設設置等の作業が完了したので、農林水産大臣は、同年一〇月一一日付農林水産省告示第一四〇一号をもって保安林の指定を解除し、同日付をもって宮崎県知事にその旨を通知したことが認められる。
3 そこで、本件許可処分後に許可内容の本件形質変更行為及び代替施設計画書に基づく代替施設設置等の作業が完了し、対象保安林について保安林の指定の解除がなされたときにも、なお本件許可処分の取消しを求める法的利益があるかについて検討するに、法三四条二項が、形質変更行為をしようとする者は、事前に都道府県知事の許可を受けなければならないとし(なお、同法施行規則二二条の九)、同条五項が、都道府県知事は、その許可申請があった場合には、その申請に係る行為がその保安林の指定の目的の達成に支障を及ぼすと認められる場合を除き、許可しなければならないとしていることに鑑みれば、法三四条二項に基づく許可処分は、あらかじめ申請に係る行為が同条五項に定める要件に適合しているかどうかを公権的に判断する行為であって、これを受けなければ適法に三四条二項に定める土地の形質変更行為をすることができないという法的効果が付与されるものであるから、その行為の作業完了前においては許可処分が取り消されれば作業ができなくなるので、許可処分の取消しを求める訴えの利益は存するけれども、その行為の作業が完了したときは、停止ないし中止すべき対象となる行為がなくなり、許可の有する右の法的効果は当然に消滅するものというべきである。
そこで、更に、形質変更行為の作業完了後においても、なお右許可処分の取消しを求める法律上の利益があるか否かについて見るに、法三八条二項は、都道府県知事は、「第三十四条第二項の規定に違反した者」に対し、復旧に必要な行為をなすべき旨を命ずることができる(以下、この命令を「復旧命令」という。)と規定しているが、法三四条二項にいう許可は、同条五項の許可基準に適合していることを当然の前提とするものであり、右許可基準に違反してなされた許可の如きものは予定してるところではないから、かかる基準違反の許可は、法三四条二項の許可に含まれないと解するのが相当であり、また、復旧命令を定めた法三八条二項は、「第三十四条二項の規定に違反した者」のほか、偽りその他不正な手段により三四条二項の許可を受けて土地の形質変更行為をした者に対しても右復旧命令を発することができると規定しており、その場合、復旧命令の発令にあたって、当該許可の取消しを前提としていないことからすると、当該許可の取消しは、復旧命令を発するにあたっての法的障害となるものではないというべきであり、また、復旧命令を発すべきか否かは、都道府県知事の裁量であって、たとえ右許可が違法であるとして判決で取り消されたとしても、それにより復旧命令を発すべき法的拘束力を生ずるものでもないというべきである。
しかも、本件においては、既に、本件解除予定保安林についての保安林の指定の解除がなされているのであるから、本件許可処分の取消しを求める訴えは、その利益を欠くに至ったものというべきである。
なお、控訴人らは、本件訴訟は形質変更行為についての本件許可処分の取消しとともに本件解除予定保安林についての保安林の指定の解除手続の有効性をも不可分一体のものとして争っているものであり、右保安林指定解除処分は違法、無効のものであるから、訴えの利益はなくならない旨主張しているが、本件許可処分と右保安林の指定解除処分とは、法律上処分権者を異にする別個の行政処分であって、両者を不可分一体のものということはできないから、控訴人らの右主張採用はできない。
四 以上の次第であるから、控訴人福留實及び同図師サエノの本件訴えは、不適法として却下すべきことになるので、原判決中右控訴人両名に関する部分を取消し、同控訴人らの各訴えを却下し、原判決中その余の控訴人らの各訴えを却下した原審の判断は相当であり、同控訴人らの本件控訴はいずれも理由がないから、これを棄却することとし、控訴費用の負担について、民訴法九五条、八九条、九三条を適用して、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 根本久 裁判官 海保寛 横田信之)